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8/25~9/1 |
<オランダ>ライデン |
Leiden University Medical Center |
9/2~9/5 |
<ドイツ>センデンホルスト |
ST. Josef-Stift |
9/6~9/8 |
<ドイツ>メーアブッシュ |
ST. Elisabeth-Hopital Meerbusch-Lank |
9/9~9/17 |
<フランス>ナント |
Clinique Jeanne d’Arc |
9/18~9/23 |
<スイス>チューリッヒ |
Schulthess Klinik |
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Yuho Kadono |
埼玉医科大学 整形外科 門野 夕峰 |
2017年度の日欧リウマチ外科交換派遣医は、埼玉医科大学の門野と九州大学の福士先生の2人で、8月25日~9月22日の日程で4か国5施設を訪問してきました。最初の施設としてオランダのライデン大学を訪問することになっていたため、香港で合流してから2人揃って前日にアムステルダム入りする予定でした。ところが香港へ向かう予定の8月23日に香港を台風が直撃したため、福士先生が搭乗する予定のフライトがキャンセルとなったため予定を変更して、現地で集合することになりました。自分が搭乗する予定の便は成田を夜遅くに出発したため、台風一過後の香港に到着し、4時間遅れでアムステルダムに向けて出発することができました。
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1.Leiden University Medical Center(オランダ、ライデン)
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ライデン大学はアムステルダム近郊にある大学で、整形外科のNelissen教授は現在、ERASSの理事長を務められています。LUMCのMRSAスクリーニングのレギュレーションは厳しいことがあります。事前に日本で検査しておくように言われたのですが、日本語で印字された結果はたとえ英訳をつけても認めてもらえず、現地で再度MRSAの鼻腔、咽頭培養をすることになってしまいました。実はヨーロッパで一番厳しいオランダで毎回検査をすることになるため、培養結果がでるまでの時間をなるべく無駄にしないように金曜日に培養をスタートしているとのことでした。
培養が陰性とでるまでの間は患者さんと接することは禁止されているため、手術室はおろか外来さえも見学はできないので、ドライな研究について紹介していただきました。RSA(Radiostereometric Analysis)を用いた研究では、手術時に径1 mm程度の金属マーカーをインプラントと骨内に埋め、2方向の放射線画像から3Dモデルと照合することで、誤差1 mm以内で位置を測定していました。放射線学的に透亮像が見られれば必ずといっていいほどインプラントのマイクロモーションがあるそうで、骨欠損が大きくなってから再置換が必要になるよりも早期に判別できるような指標を見つけたいとのことでした。
週明けの月曜日は7時45分からカンファを行い、週末の出来事と1週間の予定手術について20分ほどディスカッションしました。このような短いカンファを毎日行うことですべての症例を検討しているとのことでした。カンファ後はまたドライな部門を見学させていただきました。整形外科部門には外科医だけでなく、バイオメカ担当やリハ担当のスタッフがいて、それぞれが別の視点で研究を行っていました。術後早期に退院するオランダでは、リハビリは自宅もしくは近くで通所して行うのが一般的で、外科医ではなくリハビリ医またはPTがリハビリメニューを決めているため、レベルの格差が大きいことが問題となっていて、標準化が求められているそうです。しかしながら症例ごとの背景が異なりすぎるためEBMの確立に苦慮しているとのことでした。とくにリハビリ医の視点からは、手術適応のばらつきがあって困ると言われ、「確かに…」と納得せざるを得ず、日本においても大きな課題であると思いました。
火曜日には晴れてMRSA陰性が証明され、手術見学が始まりました。手術はRAに対するTHAやTKAなど人工関節置換術以外にも、腫瘍の手術も見せていただきました。大腿骨遠位部の軟骨肉腫の切除後、allograftを研究段階のカーボンプレートで固定して再建していました。強度を保つために厚くなっていますが、透視ではうっすらとしか見えないものでした。強みとしてはMRIでのアーチファクトが少なく、腫瘍の再発の有無を確認する際には利点になると話していました。みなさんご存知かもしれませんが、麻酔が前室で行われるために入れ替えの時間が短いこと、手術部から出たり入ったりすると効率が悪いので休憩や食事も含めてすべて手術部内で済ませられること、特化した手術部スタッフがいるため手術機械やインプラントの準備が速く確実であることなどが、日本の現状と異なる点であると思いました。
木曜日にはNelissen教授をはじめとするスタッフの先生方との食事会を開いていただけ楽しいひと時を過ごさせていただきました。
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教授室前にて。左からNagels先生、門野、Nelissen教授、福士先生。 |
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2.St. Josef-Stift(ゼンデンホースト、ドイツ)
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土曜日には鉄道でライデンから北ドイツにあるミュンスターまで移動し、Platte先生に駅まで迎えにきていただきました。Platte先生は昨年ERASS側のフェローとして日本にいらしていたので、立場を換えて1年ぶりに再会することとなりました。St. Josef-Stift 病院があるゼンデンホースト周辺は酪農が盛んで牧場が多く、合わせて馬牧場やコーン農場が多いのどかな地域でした。St. Josef-Stift病院はゼンデンホースト出身の資産家が故郷に教会と病院を作るために財団を設立したことに始まります。1889年に総合病院が設立され、結核療養所、リウマチ療養所と時代に沿って役割を変えながら、現在のようなリウマチ及び整形外科に特化した病院になったそうです。リウマチについては外科だけでなくリウマチ科、小児科の診療も行い、リハビリセンターや高齢者ケア施設も併設しており、トータルケアを実現していました。リウマチグループはBause先生とチーフとして、Platte先生、Rokahr先生が中心に運営されていました。
手術はリウマチ患者のTHAとTKA、足の外科、手の外科を見学しました。ドイツでは1人の外科医が年間50件以上の人工関節手術を執刀していないと保険者から支払いをしてもらえなくなるため、センター化する必要があるとのことでした。また定型的な人工関節手術では手術時間にも制限があり、超えた場合には症状詳記を書く必要があり、保険者によって外科医の評価も行われているとのことでした。
最終日の夕方にはPlatte先生の自宅に招いていただき、ドイツ風BBQを食べながら多くのスタッフの先生方と語らいました。
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病院職員向けのパーティーにて、Bause先生と。 |
Platte先生の自宅にて。前から2列目左から藤田先生(金沢大学整形外科)、Platte先生、後列中央がRokahr先生。 |
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3.St. Elisabeth Krankenhaus(ミーアブッシュ、ドイツ)
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ゼンデンホーストに5日間滞在した後、ミュンスターから鉄道でドイツ北西部にあるデュッセルドルフ郊外のミーアブッシュまで移動しました。ERASSとの日欧リウマチ外科交換派遣医プログラムの世話人をされているPauly先生に駅まで迎えにきていただきました。ライン川沿いに立つ工場群を抜けると、St. Elisabeth病院のあるのどかな街並みが見えてきました。もともと街の総合病院でしたが、現在ではRAとOAの人工関節置換術を中心に行う病院として運営されているとのことでした。手術数は年間1500件で、半数はTHA、TKAで、足の外科もMISを中心に300件行われていました。外来の待合室などには扱っている疾患に関するパンフレットが整備されており、システマティックに診療が行われている印象を受けました。
Pauly先生は6月末に退職されたとのことで、院内では主にLorenz先生に案内していただきました。手術はTHA、TKAを中心に手洗いをさせていただきました。手術は執刀医とCTA(手術専門アシスタント、看護師と医師の間の職業)と2人で行えるように、機器の工夫がなされており非常に勉強になりました。見学したのは3日間と短い期間でしたが、Lorenz先生にはデュッセルドルフ、Pauly先生にはケルンを案内していただき、ドイツの文化にも触れることができました。 |
ミーアブッシュのレストランにて、Pauly先生(左)、Lorenz先生(右)と。 |
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4.Clinique Jeanne d’Arc(ナント、フランス)
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1週間のドイツ滞在後、土曜日にデユッセルドルフからミュンヘン経由でナントに飛行機で移動しました。ナントはフランス西部にあるロワール川のほとりにあり、船の時代は貿易の盛んな港町として栄えていたそうです。さて、空港からタクシーで宿泊予定のIBISホテルに行ってみると、手違いで予約が入っておらずに一時はどうなるかと思いましたが、無事にナント駅前のホテルで1泊、翌日からIBISホテルで6泊することができました。
月曜日からは、手の外科に特化した病院であるClinique Jeanne d’Arcで手術見学をしました。手に関する症例であれば何でも診療する体制をとっているため、毎日数人の若手医師が分担して、数十症例の外傷患者の処置を手術室で行っていました。創があれば神経、血管、腱など軟部組織が傷んでいないか確認することを徹底しており、手の外科医としての意識の高さを感じずにはいられませんでした。フランス手の外科学会の理事長であるBellemere先生とはじめとするスタッフの先生方には、待機手術の見学をさせていただきました。1日に10件弱の手術をする中、症例としてはDepuytren拘縮が手根管症候群と並んで多く、ともに数件はあるという事実に驚きました。人種差があるとは知っていたものの、ここまで頻度が日本と違うと、改めて遺伝子の影響の大きさを感じずにはいられませんでした。水曜日には、たまたまTEA(Latitude、トルニエ社)の症例があったため、助手に入らせていただいて、普段見慣れてないアプローチを堪能しました。
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手術室にて、Bellemere先生と。 |
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5.Schulthess Klinik(チューリッヒ、スイス)
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1週間のフランス滞在後、最終訪問地であるチューリッヒにブリュッセル経由で移動しました。空港でユーロからフランへの両替を済ませ、ホテルに向かうために切符を買おうとしていたところ、突然Herren先生が声をかけてくれました。当日になって都合がついたためにわざわざご自身で迎えに来てくださったとのことでした。直接ホテルに行くのを変更して、病院の所在を案内してもらい、近くのバーこれから1週間の予定の確認をしました。
Schulthess Klinikがある地区にはBulgaris大学病院、小児病院、精神病院などがまとまって存在しており、研修などで連携をとっているとのことでした。病院自体は20年以上前から拡張工事を行っており、最新の建物は昨年建築が済んだばかりでした。手術室はHerren先生が率いる手の外科がと足の外科が主に使う小さな手術室と、人工関節手術や脊椎手術を行う大きな手術室があり、手の外科手術以外にも肩チームのRSAや、腱板損傷や上腕二頭筋長頭の腱鞘炎に対する手術、足の外科チームの外反母趾、槌趾、Morton病、FHL筋腱移行部のインピンジメントに対する手術も見学させてもらいました。 |
手の外科オフィス前にて、Schindele先生(左)、Herren先生(右)と。 |
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4週間の欧州滞在では、自らが普段目にしない手術を見学できただけでなく、日欧の医療システムや疾患罹患頻度の違いを知ることができました。また各国の医療に対する考え方に、歴史や文化が影響していることも知ることができました。この経験を生かして、今後のリウマチ診療に役立ていきたいと思います。
最後になりましたが、このような貴重な機会を与えていただきました関係者の皆様方、リウマチ財団を支援してくださっている皆様方に感謝いたします。
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Jun Fukushi |
九州大学大学院 医学研究院 整形外科学講座 福士 純一
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この度、2017年度の日欧リウマチ外科交換派遣医(ERASS travelling fellow)として、埼玉医科大学門野夕峰先生とともに、4カ国5施設を訪問する機会を頂きました。4週間の研修内容につきまして、ご報告させていただきます。
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Leiden University Medical Center(オランダ):2017年8月25日(金)~9月1日(金)
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研修の最初はLeiden大学です。MRSA検査に合格しないと患者さんと接触できないとのことで、金曜にチェックを受け、結果が分かった翌週より本格的な研修が開始となりました。同世代のJochem Nagels先生から、親切に案内をしていただきました。
LUMCはスタッフ6名、レジデント6-8名で、年間約1100例の手術を行っている大学病院です。主任教授のNelissen先生は肩関節と腕神経損傷がご専門で、ERASSの代表に加えてオランダの人工関節レジストリーの代表など様々な役職をおつとめの、多忙な先生です。日本とオランダとの違いについて多くの質問をいただきましたが、印象深かった点は抗菌剤の使用でした。感染症の治療の他には、抗菌剤を使用するのはインプラントを入れる場合に限り、皮切前に1回のみの投与で、3時間を超えた場合はさらに1回ずつ追加するとのことです。「この国はMRSAを入れないようにしているんだ」と話しておられました。
手術症例の約半数は骨腫瘍です。日本と異なり、軟部腫瘍の手術は一般外科が行っているそうです。滞在中に8例ほど手術を見学し、うち2回で手洗いもさせて頂きました。印象的だったのは、橈骨遠位端の再発腫瘍に対する再建法です。脛骨近位より採取した皮質骨を切除部位に2枚重ねて挿入し、遠位では舟状骨・月状骨と部分手関節固定を行う手技(TCSA)でした。Dijkstra教授が匠の技で固定され、手関節の動きが良好に残っているのは感嘆いたしました。多くの症例はレジデントが担当して執刀しており、効率よく経験を積むことができるトレーニングシステムとなっていました。またカンファレンスは毎朝行われ、15分程度で簡潔に前日の手術内容が発表されます。PTと看護師も参加し、全員で方針と処方内容のチェックを行っているのが印象できでした。私たちも自己紹介を兼ねてプレゼンをさせていただきました。
Rheumatology部門も案内していただきました。Margreet Kloppenburg教授はOAを専門にされており、なかでもhand OAの病態と治療の現状について講義していただきました。RA外来はそれぞれ広い個室で診療されており、計測に必要な道具もすべて各部屋に準備されており、使いやすい印象でした。外来に加えてデイケアがあり、PTやOTによる治療を受けて朝から夕方まで過ごすことができるほか、プールまであるとのことで驚きました。入院病棟はあるものの、近年の治療の進歩で入院患者は年々減っているそうです。
大学ならではの施設として、解剖のラボを案内していただきました。医学生の実習の他に、外科系医師のためのcadaver trainingも行うことができる施設です。X線透視装置も4台あり、様々な手術手技のトレーニングが行えるとのことでした。本邦ではまだごく限られた施設でしかcadaver trainingが行えないことを考えると、大変羨ましい環境だと感じました。
手術が早く終わった日や休日には、大学院生にAmsterdamを案内していただきました。Nelissen先生にも、多忙の中で市街のレストランに連れていって頂き、大勢のスタッフとディナーを楽しみました。 |
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多くの学生でにぎわうLeiden大学 |
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Nagels先生、Nelissen先生と |
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St Josef-Stift Sendenhorst(ドイツ):2017年9月2日~9月5日
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Leidenから電車を乗り継ぎ、約4時間でMunster駅へ移動しました。20分遅れの到着でしたが、ホームにAnsgar Platte先生が迎えに来てくれていました。Platte先生は昨年のERASSで日本を訪問されています。貴重な休日にもかかわらず日曜にはMunster市街を案内してくれ、またfarewell partyとして自宅でのBBQにも招待してくれました。
St Josef-Stiftは1889年に創立された古い歴史のある私立病院で、整形外科・リウマチ科に特化した施設です。 Rheumaorthopadieという部門があり、リウマチの手術を年間約1700例も行っています。日本からの見学者もよくあるとのことで、今回は金沢大学より藤田健司先生が一ヶ月の研修に来られていました。病院は教会と一体となっており、美しい芝生が広がっている、素晴らしく綺麗なところでした。最近リハビリ病棟を新設し、整形病棟に7-8日入院の後、リハ病棟に転棟して一月ほどリハビリを行っているとのことでした。特にリウマチ手指の術後リハビリは、誰にでも任せられるものではないので、安心できるとのこと。OTのチーフは術後の装具を自ら作成・処方し、独自のアウトリガーも開発していました。また、足底板や短下肢装具、義肢を作成する工房が病院内にあり、20名もの義肢装具士が働いていました。整形靴の職人も近々入職するとのことで、手・足の変形に対する治療が一カ所で完結するシステムには、感嘆させられました。
手術は二手に分かれて、私はリウマチの手指・足趾変形を中心に手洗いと見学をさせて頂きました。リウマチの前足部変形の基本は母趾MTP関節の固定と、第2-5足趾の底側侵入での切除関節形成術とのことで、週2-3例行っており、若いリウマチ外科医が最初に行う手術だそうです。母趾の変形が少なく無症状な場合には、第2-5足趾の中足骨頭切除のみ行い、母趾は相対的に長くなるものの、後に症状が出てきたら対応するとのことでした。THAは外側侵入で、ステムは65歳以上ではセメント、若ければセメントレスで、カップはセメントレスを原則としていました。朝8時から縦4-5例の手術が予定されていますが、別室で麻酔が導入されて搬入されるために入れ替えが早く、夕方4時ごろには予定手術が終わるようです。術者はどの部位の手術にも習熟しており、THA、RSA、足関節固定、といった感じでリウマチ患者のあらゆる病態に対応ができる、rheumoorthopaedistであることに誇りをもっていました。
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教会に併設された病棟 |
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藤田先生、Rokahr先生、Platte先生と |
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院内には装具作成の工房もある
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St Elizabeth-hospital Meerbusch-Lank(ドイツ) :2017年9月6日~9月8日
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Munster駅までタクシーで移動し、電車に乗って1時間半ほどの駅へ到着すると、Thomas Pauly先生がホームで出迎えて下さいました。病院まで送っていただき、Lorentz先生に院内を案内して頂きました。St Elizabeth病院は、Duesseldorf郊外の小さな町にある教会を母体とした病院で、17世紀頃から貧しい人のための病院として存在していたそうです。1991年にリウマチ診療に特化した病院となり、リウマチ内科と整形外科を中心に薬物療法と手術、そしてリハビリを行っています。年間の手術症例数は、THAが約400例、TKAが350例、手足の手術が300例ほどだそうです。
手術はTHAと TKAで手洗いをし、足の手術は外反母趾に対するScarf+Akin骨切り、Weil骨切り後の中足痛に対する近位での矯正骨切りなどを見学させて頂きました。足の骨切りではイメージを全く用いず、外観上の変形矯正を目標に、軟部組織のバランスを考慮した手術がなされていました。いずれの手術も丁寧でかつスムースに行われており、日本的な繊細さを感じたのが印象的でした。
手術症例の約半数は院内リウマチ内科からの紹介とのことです。手術の適応について、内科医が「判断は難しいので、いつも整形外科医に相談している」と話していたのが印象的でした。本邦においても、”surgical window of opportunity”という概念を、内科の先生と共有していく必要性を改めて感じました。
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St Elisabeth hospital |
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Foot surgeonによる外反母趾の骨切り。イメージは全く使用しない |
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Clinique Jeanne d’Arc-Nantes(フランス):2017年9月9日~9月17日
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Dusseldorf空港より飛行機を乗り継ぎ、Nantes空港へ到着し、タクシーでホテルに移動しました。ところが何かの手違いでホテルが予約されておらず、急遽別のホテルを探してもらい、事なきを得ました。
Clinique Jeanne d’ArcはNantesの市街地、住宅街の中にある手の外科専門病院です。8名の外科医が年間10000例以上の予定手術をこなしていました。手術室は5室で、3室は予定手術に使用し、2室は常時、急患手術用に使用されています。常勤の麻酔科医が前腕もしくは上腕でエコーガイド下の神経ブロックを行い、手術が終わるとすぐに次の患者が搬入される、非常に効率の良い運営がなされていました。急患は若いドクターが担当し、その内容は様々ですが、日本では外来での洗浄・縫合で終わらせそうな圧挫創でも、必ず創を開けて腱・血管・神経を確認していました。予定手術の約半数は手根管症候群で、1/3はデュプイトラン拘縮の手術であり、両手術ともフランスで1,2を争う症例数とのことでした。術者によって手技の違いはありますが、手指の軟部組織の剥離の正確さとスピードは、足部の手術においても大変参考になるものでした。ホスト役のPhilippe Bellemere先生はフランス手の外科学会の代表をされている大変多忙な先生です。外来見学では1時間に8名の予約が入っている中、英語での解説をして頂きました。 Bellemare先生はまた様々な手術器具を開発されており、Heberden結節に対する関節固定用インプラントや、pyrocarbonによる人工関節置換を見学させていただきました。症例カンファレンスは週1回、夜7時過ぎから9時過ぎまで行われ、やや複雑なケースのみが提示されていました。私たちも自己紹介を兼ねてプレゼンをさせていただき、カンファ終了後の10時過ぎから、市内随一の由緒あるレストランで食事会を開いていただきました。
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Clinique Jeanne d’Arc、現在移転工事が行われているとのこと |
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オリジナルのpyrocarbonインプラントを利用した関節形成術 |
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Schulthess Klinik (スイス):2017年9月18日~9月23日
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Nantesより飛行機を乗り継ぎ、Zulich空港へ到着。Zulichまでの電車を調べていると、”I found you!”と声をかけられ、顔を上げるとなんとHerren先生が迎えに来て下さってました。Herren先生には自宅での夕食にも招待していただき、また休日には市内観光やTitlis山へのバスツアーもご用意いただき、その細やかな心遣いには本当に感激しました。
Schulthess Klinikはスイスを代表する整形外科の専門病院で、腫瘍を除くすべての整形外科治療が行われています。整形外科医は100名近くが所属しており、160床のベッドで年間9000例前後の手術が行われていました。手術室には大きな部屋に2-4台の手術台が配置され、手術の進行に応じて前室にて次の麻酔が準備され、わずかなインターバルで次々と手術が進行していきます。今回は、肩・足・手の手術を中心に見学させていただきました。肩では私が普段見ることの少ない、reverse shoulder arthroplastyが部屋の両側で同時に行われており、大変に勉強になりました。足の外科ではRutishauser先生が外反母趾のScarf+Akin骨切り、扁平足の踵骨骨切り+腱移行、Haglund病の踵骨骨切り、といった多彩な手術を次々と縦8例でこなしていき、そのスピードと正確さに感嘆しました。手の外科では、手関節のSNAC lesionに対する4-corner fusionを見学させていただきました。グループ毎に手術室も手術チームも決まっており、それぞれのスタッフが各々の仕事に熟練しているという印象を受けました。最終日は夕方4時まで手術を見学し、後ろ髪を引かれながら病院を後にしました。
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Schulthess Klinik:ホテルのようなエントランス |
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関節鏡のモニターが10個近くあり、容易に見学可能 |
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以上、交換派遣医として経験した研修内容について報告させていただきました。4週間の滞在ではありましたが、4カ国・5カ所の病院を見学し、診療や手術の違いに加えて、多様な文化や雰囲気を肌で感じることができました。なによりも、リウマチ関節外科をリードする多くの先生方と知り合うことができ、本当に貴重な経験となりました。訪問先の先生方のご好意に心より感謝申し上げるとともに、受けたおもてなしをいつか日本でお返しできるよう努力したいと思います。
このような機会を与えて頂いた日本リウマチ財団の関係各位、薦めてくださった九州医療センター宮原寿明先生と中島康晴教授、留守中の病院業務をサポートしてくれた同僚の先生方、そして4週間本当にお世話になった門野夕峰先生に、心より感謝申し上げます。
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