日本リウマチ財団ニュース

NO187号2024年11月号

国際学会報告書 欧州リウマチ学会(EULAR) 2024

 

田巻 弘道 氏
聖路加国際病院 Immuno-Rheumatology Center 医長
責任編集:岡田 正人
医療情報委員会委員
聖路加国際病院 Immuno-Rheumatology Center

 

EULAR2024はオーストリアのウィーンで行われた。会場となったWien Messeは片方の端の入り口に近接する地下鉄の駅があり、その次の駅が反対側の出入り口に近接しているという広大な会場であった。Congress Dinnerでは、弦楽団によるクラシック音楽とダンサーによるワルツでヨーロッパ文化をまさに感じさせる様な演出も見られた。今回の試みとしては、case reportセッションがあり、口演とポスターの両者で症例報告を行う試みがあり、盛り上がりを見せていた。一つの症例から得られる学びというのも大切であることが感じられた。ポスターセッションでは、各モニターの上に表示されたポスターの前に演者が立ち直接face to faceで議論が行われ、今までのポスターツアーが帰ってきた感じであった。今回も非常に盛り上がった学会であったが、今回のEULARの発表の中から、筆者が独断と偏見で興味深いと感じた内容を幾つが取り上げる。

 

1.EULARの推奨

毎年恒例のEULAR推奨のセッションであるが、今回はIとIIの二つのセッションがあった。Iの方では、以下の推奨が紹介されていたが、既にpublishされている或いは昨年のEULARでの紹介があったため、詳細に関しては割愛させていただく。タイトルを以下に示させていただく。

EULAR Points to Consider on the initiation of targeted therapies in patients with inflammatory arthritis and a history of cancer (昨年のEULARで発表あり)

EULAR recommendations for PRP involvement:2023 Update (Annals of the Rheumatic Diseases Published Online First: 14 June 2024. doi: 10.1136/ard-2024-225566)

2023 EULAR recommendations for the management of fatigue in people with inflammatory rheumatic and musculoskeletal diseases (Annals of the Rheumatic Diseases Published Online First: 22 November 2023. doi: 10.1136/ard-2023-224514)

2023 EULAR recommendations for the use of imaging in the diagnosis and management of crystal-induced arthropathies in Clinical practice (Annals of the Rheumatic Diseases 2024;83:752-759.)

IIの方では全身性強皮症の推奨、妊娠、出産、授乳に関わる抗リウマチ薬使用のpoints to consider、そして関節痛から関節リウマチへと進展していく患者のリスク層別化を行うための基準の三つが発表されていた。

表1   全身性強皮症のEULAR推奨2024年のアップデート

 

 

最終2017年にupdateがされていた全身性強皮症に対する推奨が今回updateされた。2017年は、レイノー、指趾潰瘍、肺高血圧、皮膚と肺、腎クリーゼ、消化管病変の6つの領域で推奨がされていたが、今回のupdateではまとまっていた皮膚と肺の領域が、皮膚と肺とそれぞれに独立した領域で推奨が記載される様になった。それに筋骨格系を加えて最終的に8領域で推奨が示される様になった。また、今回のセッションではレイノーと指趾潰瘍、肺高血圧、間質性肺炎にて治療のフローチャートが示された。

各領域の変更点をみてみよう。

  • レイノーに関しては、2017年の推奨ではフルオキセチンに関してコメントがあったが、2024年ではなくなった。
  • 肺高血圧に関しては、PDE5阻害薬とエンドセリン受容体拮抗薬の組み合わせを第一選択とすることとワーファリンの使用を推奨しないという2点が新たに追記になった。
  • 皮膚に関しては、2017年には早期汎発型全身性強皮症に対するメトトレキサートが勧められていたが、2024年のupdateではメトトレキサートに加えて、ミコフェノール酸モフェチル、リツキシマブが記載された。また、早期炎症性汎発型全身性強皮症に対してトシリズマブを考慮することがコメントされている。
  • 肺に関しては、2017年ではシクロホスファミドが進行性間質性肺炎に推奨されていたが、2024年のupdateではミコフェノール酸モフェチル、シクロホスファミド、リツキシマブがコメントされているとともに、抗線維化薬であるニンテダニブを単独あるいはミコフェノール酸モフェチルとの組み合わせやトシリズマブがコメントされており、最も大きく変わった領域となっている。
  • 筋骨格系は新たにつくられメトトレキサートがコメントされている。
  • 指趾潰瘍、腎クリーゼ、消化管に関しては大きく変更はなかった。

この数年の全身性強皮症領域での臨床試験の成果が感じられるupdateとなった。

表2 妊娠出産授乳に関する抗リウマチ薬の使用のEULAR 推奨2024年のアップデート

 

 

前回のpoints to considerは2016年に発表されたもので、妊娠前、妊娠中、授乳中の抗リウマチ薬の使用に関して述べたものであった。今回、8年ぶりの改定となったわけであるが、妊娠前、妊娠中、授乳中に加えて、男性の項目も付け加えられることとなった。

包括原則では表現は変更されているものの、カウンセリングの重要性、疾患活動性の治療目標、薬物療法のリスクの考え方、共同意思決定という点では大きく変更はなく、母乳栄養のメリットを考慮して、母乳栄養と適合する薬を使用している場合は思いとどまらせるべきではないという項目が追記された。

実際の薬剤の項目に関しては、表の中の詳細をみていただければと思うが、日本の添付文書とは齟齬があるものも多いことにご注意いただければと思う。この8年で手に入る様になった新たな薬剤が多くあり、それらに関しての記載が加わったこと以外にも、以前のpoints to considerから変わった点がいくつかある。

  • 生物学的製剤に関してはその胎盤以降性に関しても薬剤選択の考慮に入れる
  • 効果的に病気を使用するのに必要であれば、使用しても良いかもしれないという記載になった非TNF阻害薬の生物学的製剤がある
  • 子宮内で生物学的製剤に暴露した胎児のワクチンに関する記載がなされた
  • 重症或いは治療抵抗の母体に対する薬剤選択としてコメントのある薬剤が増えた

 

今回発表された推奨が、今後の皆さんの診療の参考になり、リウマチ性疾患を罹患した方々の治療に寄与することを願ってやまない。

 

2.関節痛の患者での関節リウマチ発症のリスク層別化のACR/EULAR基準

上記のEULAR recommendation IIにて発表になっていた。包括原則では、この基準は均質な患者を研究に入れる為の基準であり、リスクがあることがすなわち病気があることではないということがポイントとして示されていた。1年後の臨床的に明らかな炎症性関節症があることが主要評価項目となっており、また、基準をつくるにあたり、臨床情報と血清学的情報を中心にモデルをつくり、画像検査はその後に追加してモデルが改良されるかをみるという形で行われた。感度と特異度が両者とも80%程度が目標となる様に臨床情報と血清学的情報のモデルが作成され、それに超音波の情報やMRIの情報を加えることでモデルが改良されるか検証されたが、臨床/血清基準ではROC曲線を書きカットオフ値を決めAUCが0.80となった。超音波を加えた場合もAUCが0.80であり、MRIを加えたところ0.86となり、最終的に臨床/血清基準にMRIをoptionで加えるモデルが最終的な結果となった。

表3 関節痛の患者での関節リウマチ発症のリスク層別化のACR/EULAR基準

 

3.AXIS study

乾癬性関節炎の体軸病変は、体軸性脊椎関節炎と異なる側面があることが報告されているが、体軸性脊椎関節炎を包括的に評価した疫学的なデータは今までなかった。AXIS studyはGRAPPAとASASによって行われた乾癬性関節炎の体軸病変に関する全世界的な疫学的な調査である。409名の患者が組み込まれ、臨床兆候、血液検査、画像の結果が集められ、その結果からそれぞれの研究者の最初の評価が行われ、画像に関しては中央判定も行われ、最終的な研究者の診断が下されるという流れとなっている。

最終診断では409名中112名(27%)が体軸性病変ありと診断された。体軸病変ありとなしで比較すると、体軸病変のある患者では、乾癬の体表面積が広いこと、HLA-B27の陽性率が高いこと、CRPが高いこと、評価者による炎症性背部痛の評価の割合が高いことなどが統計学的に有意であったが、乾癬性関節炎発症年齢、末梢関節炎の有無、付着部炎のスコア、指趾炎の数、背部痛の有無、背部痛の発症の年齢、背部痛のNSAIDsへの良好な反応、ぶどう膜炎の既往、炎症性腸疾患の既往、脊椎関節炎の家族歴などには差がなかった。興味深いのは、炎症性の背部痛は当然、体軸病変のない患者では43.4%に対して、体軸性病変のある患者では74.7%と割合が多いが、体軸性病変がなくても4割近くに炎症性腰痛があり、体軸性病変があっても25.3%は炎症性背部痛がないという結果は問診での判断の限界を示しているのかもしれない。

 

4.個人的に興味を惹かれた発表や研究結果

口演

LB0001 巨細胞性動脈炎に対するウパダシチニブの効果 SELECT GCA study

巨細胞性動脈炎は高齢者に起こる大型血管炎で、現在、生物学的製剤としてはIL-6阻害薬であるトシリズマブが保険承認を得ている。第3相試験として、ウパダシチニブをプラセボと比較した試験の結果が発表された。新規発症あるいは再燃を起こしたGCAで40mg/日以上のプレドニゾンをベースラインの前に使用しており、ベースライン時点で20mg/日以上使用している患者が対象となっており、IL-6阻害薬に対して効果不十分やベースライン4週以内にIL-6阻害薬を使用している場合は除外されている。420名が2:1:1でそれぞれウパダシチニブ15mg/日、ウパダシチニブ7.5mg/日、プラセボの3群に分けられ、ウパダシチニブ群はいずれの用量でも26週でのグルココルチコイドの漸減、プラセボ群は52週での漸減をおこなった。

患者の年齢は71歳程度、女性が70%程度、BMIは25程度、新規発症が7割程度、虚血性の目の症状が10-20%、リウマチ性筋痛症が50-60%程度であった。主要評価項目である12週から52週までの寛解維持を達成できた患者の割合はプラセボ郡が29.0%であったのに対して、ウパダシチニブ15mg郡では46.4%(P=0.0019)、ウパダシチニブ7.5mgでは41.1%(P=0.0579)であった。寛解維持とは、巨細胞性動脈炎の臨床症状や兆候がない状態で、プロトコールに定められたグルココルチコイドの漸減に従っている状態である。

有害事象に関しては、既知のものと比較して新たにみつかったものはなかった。

今後、GCA治療のさらなる選択肢として承認がされるか期待がもたれる結果であった。

 

OP 0114 新たに市場に登場した生物学的製剤や標的型合成抗リウマチ薬はChanneling Biasのため、有害事象が多くみえるのか?

生物学的製剤や標的型合成抗リウマチ薬が、市場に登場し使用され始める際には、治療抵抗性で並存疾患のある患者に使われることが多く、channeling biasによって新しい薬剤は使用され始めた最初の数年は有害事象が多くみえる可能性がある。これらに関して検証するために、スウェーデンのレジストリーを使用した研究である。安全性の項目としては、主要心血管イベント、静脈血栓塞栓症、悪性腫瘍、重篤な感染症の複合アウトカムを使用し、スウェーデンの市場でそれぞれの生物学的製剤や標的型合成抗リウマチ薬が手に入る様になってからの年数(2年未満、2年から5年、5年を超える)と、暦上の年(2006-2010年、2011-2015年、2016-2021年)で層別化して解析をした。また、3つのモデル(HR1: 調整なし、HR2: 年齢、性別、何番目の生物学的製剤/標的型合成抗リウマチ薬か、HR3: HR2に加えて、関節リウマチに関連する項目、合併症、併用薬剤、医療消費、社会経済項目)でハザード比を算出した。年齢の中央値が59歳(48-68)、77%が女性の4万人を超えるコホートにて、上記の複合アウトカムの発生率は1000 patient-yearsでみてみると、発売開始から2年未満で開始した場合には72、2-5年では73、5年を超えると53であり、発売開始から2年未満で開始した群と比較すると、HR1の調整なしのモデルでは2-5年で開始した群はハザード比で1.01(0.91-1.13)であったが、5年後以降に開始した群では0.72(0.73-0.80)と発売され5年以上経って始めた方が、複合アウトカムの有害事象が起きることが有意に少ないことが示された。HR2のモデルでは、2-5年で開始した群は0.99(0.89-1.11)、5年後以降に開始した群では0.83(0.67-0.80)と調整なしと大きく変わらなかったが、他の背景を含めて調整したHR3では2-5年で開始した群は0.98(0.88-1.10)であったが、5年後以降に開始した群では0.94(0.86-1.04)と、背景の調整によりその有意な変化がなくなることが示され、channel biasの存在の可能性が示唆された。また、暦上の年(2006-2010年、2011-2015年、2016-2021年)で層別化では、暦の年が後であればあるほど、HR1、HR2、HR3のいずれのモデルでも複合アウトカムの有害事象が減少していた。

 

OP0010 生物学的製剤で乾癬を治療されている患者は乾癬性関節炎を起こしにくいのか?

乾癬のある患者が、乾癬に対して様々な生物学的製剤を使用した際に、後々の乾癬性関節炎が防げるのかという問いに対して、今まで多くの試験が行われてきているが、決定的な結論はまだ得られていない。グセルクマブに関しては、前向きプラセボ比較ランダム化比較試験が行われておりその結果が待たれる。

TriNetXというヨーロッパ、アメリカ、アジア、ラテンアメリカの世界30か国の250を超える医療システムから得られたデータを用いて後方視的に100万人を超える乾癬の患者でIL12/23阻害薬、IL17阻害薬、IL23阻害薬を使用した人を対象に、TNF阻害薬を使用した患者さんとの比較で乾癬性関節炎の発症を比較した試験である。性別、乾癬の診断からの時間、肥満、アルコール使用、喫煙、爪の乾癬、抗リウマチ薬で調整を図っている。乾癬があり、乾癬性関節炎のない患者で最初の生物学的製剤としてTNF阻害薬を使用した患者が24,700名、IL12/23阻害薬を使用した患者が6020名、IL-17阻害薬を使用した患者が5,440名、IL-23阻害薬を使用した患者が58,30名おり、その中で上記の因子で調整をし、5年間の乾癬性関節炎発症を追いかけたところ、TNF阻害薬を1として、ハザード比でIL12/23阻害薬は0.678(95%CI: 0.593-0.777)、IL-17阻害薬は1.129(95%CI:0.994-1.281)、IL-23阻害薬で0.579(95%CI:0.496-0.675)であった。セカンドラインとしてそれぞれの生物学的製剤を始めた場合に3年間観察した場合は、ファーストラインでのTNF阻害薬を1としてハザード比でIL12/23阻害薬は0.696(95%CI: 0.565-0.857)、IL-17阻害薬は1.290(95%CI:1.039-1.601)、IL-23阻害薬で0.708(95%CI:0.506-0.991)であった。IL-23経路を阻害する薬剤の予防効果がみられた試験であった。今後の、前向き試験の結果が待たれる。

 

OP0127 回帰性リウマチで持続的な関節炎の出現を予測する

早期関節炎のコホートが有名なリーズ大学からの報告である。回帰性リウマチの中から一定数関節リウマチへ移行することが知られており、特に抗CCP抗体が陽性であることがリスクとして知られている。臨床的に使うことのできるリスク予測モデルを作成することを目的として本研究は行われた。

回帰性リウマチの定義としては、病歴や診察で確認された関節の痛みや腫れのエピソードがあり、発作と発作の間は正常に戻り、他疾患が除外されていることと定義されている。この試験では継続性の炎症性関節症への進行は、少なくとも一つの圧痛と腫脹のある関節がリウマチ医に確認され、3週間以上継続することと定義されている。全部で161名の回帰性リウマチ患者が研究に組み込まれ、40-60歳の患者が52%と最も多く、女性が69%、94%が過去の喫煙歴があり、34%が1親等に関節リウマチ患者がおり、発作時に腫れる関節が三つ以下の割合が68%、発作の間隔は44%で1ヶ月未満、55%がShared epitope陽性、CCP抗体は70%、リウマチ因子39%で陽性の群であった。平均で3.3年のフォローアップがあり、33%が継続性の炎症性関節症への進行を認めた。その中で、本基準を満たしたのは91%であった。

最終的な基準は表4に示す。

表4 回帰性リウマチ患者の持続的な関節炎のリスク予測

既知の通り、抗CCP抗体がリスクスコアの重み付けの中では一番高く配点されており、特に正常上限の3倍以上では5点となっている。また、2点以下で低リスク、3点以上8点以下で中等度リスク、9点以上で高リスクとなる。それぞれの群の生存曲線はabstractのアーカイブでみられるので参考にしていただけたらと思う。

https://scientific.sparx-ip.net/archiveeular/?c=a&searchfor=OP0127&view=1&item=2024OP0127

 

OP0274 変形性関節症でのプラセボ注射の効果について解き明かす

現時点では変形性関節症に対する、承認された疾患修飾性の薬剤はない。臨床試験では平均的に75%の疼痛減少、71%の機能改善、83%のこわばりの改善が変形性関節症のプラセボ効果として認められているとも言われており、プラセボ効果の高さのため、プラセボ比較試験で実薬が薬剤の効果の差を示しづらくしていると言われている。Model-Based Meta-Analysis(MBMA)という手法で、関節注射のプラセボ効果に迫ったのが今回の研究である。115のランダム化比較試験の8151名の参加者が解析された。WOMAC painではベースラインの値が高い方が、プラセボ注射での低下の幅が大きく、他の関節に比べて膝関節のほうが、生理食塩水のプラセボに比較して他のプラセボがWOMAC painの減少が大きかった。また、疼痛のスケールに関しては、同様にベースラインが高い場合と膝以外の関節に比べて膝関節のほうがスコアの下がり幅が大きかった。また、女性の方が、疼痛下がり幅が大きいことも示された。また、プラセボ効果が12ヶ月は継続することも示された。

 

ポスター

POS0110 巨細胞性動脈炎の再燃は最初にやってきた症状で再燃するか?

多臓器疾患では、再燃を起こす際に最初の症状と同じ症状で再燃するのかは医療者側も患者側も気になるトピックである。Mayo Clinicから過去の3つの巨細胞性動脈炎(GCA)のコホートを用いた結果がポスター発表された。510名の患者が解析対象となった。症状は全身症状、筋骨格系、頭蓋、眼、大型血管の5つのカテゴリーに分けられて解析された。59%の303名が1回以上、31%の160名が2回以上の再燃をきたした。ベースラインでは一つのカテゴリーのみの症状の患者は10%しかいなかった。1回目の再燃のうち68%が一つのカテゴリのみ、2回目の再燃でも64%が一つのカテゴリーのみと、再燃時には半数以上が一つのカテゴリーのみでの再燃だった。5人に1人はベースラインの時になかった新たな症状で最初の再燃が認められた。ベースラインに以下の症状があると、最初の再燃で有意なリスクとしては、

全身症状 → 全身症状の再燃2.4倍増

筋骨格系症状 → 筋骨格系の再燃 4.4倍増、頭蓋の再燃 0.45倍(リスク低下)

頭蓋症状 → 頭蓋症状の再燃3.7倍増

眼症状 → 目の症状の再燃 15倍

大型血管 → 頭蓋症状の再燃 0.54倍(リスク低下)、大型血管の再燃 25.7倍増

元々あった症状が再燃するリスクは高いことがわかるとともに、全般的には眼症状での再燃は少ないものの、眼症状があった場合にはその再燃のリスクが高くなることがわかる。

 

POS0891 炎症性関節疾患にて感染症の際に治療薬を止めるべきかどうか?

オランダで、関節リウマチ、乾癬性関節炎、脊椎関節炎に対しての治療薬を感染症が起きた際に中断すべきかに関してのオープンラベルランダム化比較試験が行われた。全体で1,142名が試験に組み込まれ、475名が少なくともCTCAE version5でgrade 2以上の感染症がみられ、233名が治療薬を中断、242名が継続した。主要評価項目はCTCAE version5でgrade3以上の重篤な感染症を起こす割合である。関節リウマチが60%程度、乾癬性関節炎が30%程度、脊椎関節炎が10%程度含まれており、csDMARDが70%程度、生物学的製剤が44%程度、標的型DMARDが9%程度であった。重篤な感染症は、中断群で5.15%、継続群で3.72%起こり、特に統計学的有意差はなかった。治療薬を継続していても、重篤な感染症につながる割合は増えないという結果となっている。

 

以上限られたスペースの中での報告となったが、日々の臨床に役立つ情報が満載されていた会議であった。来年はバルセロナでの開催の予定である。来年の学会も楽しみである。