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リウマチに関連する病気

体軸性脊椎関節炎(axSpA)

① 体軸性脊椎関節炎とは?(定義)

体軸性脊椎関節炎(axSpA)は腰や臀部、背部などの体の中心付近(体幹部)にある関節や、靭帯や腱などに炎症をきたし、疼痛や骨関節の変形が起こる原因不明の疾患です。骨盤や脊椎など体幹部にある関節を体軸関節といいますが、axSpAでは特に体軸関節である仙腸関節(骨盤と脊椎をつなぐ関節)や脊椎にある靭帯の付着部(靭帯が脊椎に付く部)に炎症を起こすことが多く、また仙腸関節や脊椎のみならず、時に手足などの末梢関節の関節炎や付着部炎を起こし、さらには炎症性腸疾患や乾癬などの骨関節以外の症状を呈する場合もある疾患です。

②この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?(疫学・頻度)

axSpAには、強直性脊椎炎(AS)、乾癬性関節炎(PsA)、炎症性腸疾患に伴うものなど、脊椎や仙腸関節、末梢関節に炎症が起こる疾患群が含まれ、その有病率は東南アジアでの0.2%ほどから、北極圏での1.6%ほどまで様々です。日本では0.01%弱と報告されています。このうち代表的疾患であるASは世界的には0.02~0.35%の有病率ですが、わが国での推定有病率は0.0065%(5,000~8,000人)とされています。PsAはわが国で5~6万人いるとされ、その40%に脊椎炎がみられます。

③この病気はどのような人に多いのですか?(男女比・発症年齢・加齢)

axSpAの男女比は3:1で男性に多く、平均発症年齢は男性約30歳、女性約40歳とされています。この病気を発症すると加齢とともに経年的に靭帯の骨化が進行し、体軸関節が強直に至る場合があります。加齢自体がこの病気の発症に関係することはありません。

④この病気の原因はわかっているのですか?(病因・誘因・遺伝)

発症原因は明確ではありませんが、前述のようにaxSpAには強直性脊椎炎(AS)、乾癬性関節炎(PsA)、炎症性腸疾患に伴うもの等、様々な疾患群が含まれ、axSpA のうちの大部分を占めるASに関してはその発症・進行にはHLA-B27という組織適合性抗原(ヒトの免疫に関わる重要な分子)などの遺伝的要因、靭帯付着部への物理的ストレスなどの環境要因、腸内細菌などの様々な要因が複雑に関与していることが分かっています。
ASでは靭帯付着部に物理的ストレスが加わることにより局所に炎症が起こり、炎症が慢性化するにつれ、関節や脊椎に骨病変を形成していきます。

⑤この病気はどのような症状がおきますか?(症状)

ここではaxSpA のうちの大部分を占める強直性脊椎炎(AS)に関して記載します。病初期では主に背中や腰、臀部の痛みやこわばり感やだるさなどが出現することが多く、この症状は運動により軽快し、安静で悪化することが特徴の1つです。

臨床症状
1) 骨・関節症状

➀腰背部痛・頚部痛
左右の差がなく両側とも痛むような痛みで、かつ持続性のことが多いです。 痛みとともに脊椎の硬直(硬くなり長りにくくなること)を認めます。

腰背部痛は臀部・腰部から次第に背

② 姿勢、脊柱可動性障害
重症例では腰椎(脊椎の下の方の部分)がまっすぐに変形し、胸椎(脊椎の胸部方の部分)が前に曲がり、頚部(脊椎の頭に近い部分)は前に曲がります。

③ 末梢関節炎・付着部炎・指趾炎
四肢大関節(足・股・膝・肩・胸鎖関節)に疼痛や運動制限が起こることがあります。

2) 骨・関節外症状

① 急性前部ぶどう膜炎
ASでは眼のぶどう膜炎を突然発症し、再燃を繰り返すことが、約1/4の例でみられます。
② 炎症性腸疾患
ASではクローン(Crohn)病や潰瘍性大腸炎(UC)を合致することがあります。AS患者の4%にこれらの疾患の合併を認めます。
③ 乾癬
AS患者の10%に乾癬の合併による皮疹を生じます。乾癬合併例では末梢関節炎を呈することも多く、体軸関節炎も重症のことが多いとされています。
④ その他
心血管疾患、肺疾患、骨粗鬆症・骨折の合併などが報告されています。

⑥この病気にはどのような検査法がありますか?(診断)

医師による身体検査、血液検査、脊椎・仙腸関節のレントゲン検査、MRI検査などがあります。

⑦この病気にはどのような治療法がありますか?(治療)

治療目標と治療方針

ASの治療は疼痛やこわばりをはじめとする様々な症状をコントロールすること、靭帯骨棘の進行による強直の抑制が目標となります。

1) 患者教育・運動療法

喫煙者は骨化が進行しやすいので禁煙が重要です。運動療法による筋力維持・増強、柔軟性改善、心血管系に対する適度な負荷などは大切で、症状の緩和、可動域や姿勢の維持に対して期待できます。日本脊椎関節炎学会のHPでAS患者さんのための体操が公開されていますので、参考にして下さい。

2) 治療薬の選択と各薬剤の位置づけ

第一選択薬としては、局所の炎症や疼痛を抑制するために、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)を使います。

a. NSAIDs

NSAIDsの効果は一般的な腰背部痛に比べて高い(70~80%で有効)ことがASの特徴です。

b. 疾患修飾性抗リウマチ薬(csDMARDs)

ASでの有効性は認められませんが、サラゾスルファピリジン(SASP)は早期ASの末梢関節病変には有効とされます。

c. グルココルチコイド(副腎皮質ステロイド)

グルココルチコイドの全身投与は無効ですが、末梢関節への関節注射や関節周囲の靭帯・腱などへの局所投与は有効です。

d. 生物学的製剤(Biologics)

NSAIDsでコントロール不良の例に用いられ、若年者・短い罹病期間・CRP上昇例で効果が高いとされます。

e. JAK阻害薬(JAK)

ウパダシチニブとフィルゴチニブで有効性が認められています。

3) 手術療法

疼痛や関節変形が強くなり、日常生活に影響が出るようになったら、手術治療を考慮する必要があります。

⑧この病気はどのような経過をたどるのですか?(予後)

ASでは放置すると経年的に体軸関節の強直、末梢関節の破壊に至る場合がありますので、早期診断・早期治療開始が重要になります。

【情報更新】令和6年10月