国際学会におけるリウマチ性疾患調査・研究発表に対する 助成者報告書(ACR 2023)

 

京都大学医学部附属病院 免疫・膠原病内科
辻 英輝

 令和5年度日本リウマチ財団国際学会におけるリウマチ性疾患調査・研究発表助成を頂き、誠にありがとうございました。ご評価いただきました選考委員の方々をはじめ財団関係者の皆様、ご推薦いただきました三森経世先生にはこの場をお借りして、厚く御礼申し上げます。
 この助成金は、研究集会発表に要する参加登録料、旅費、宿泊費として使用いたしました。助成金のおかげで、令和5年11月11日から11月15日にアメリカ合衆国、サンディエゴで開催された2023年アメリカリウマチ学会総会に出席し、研究内容をポスター発表することができました。
 私は、特発性炎症性筋疾患(以下筋炎)に関して研究をしております。2023年3月から6月にスウェーデン、カロリンスカ研究所リウマチ科Ingrid Lundberg研究室に滞在し筋炎の研究に従事しました。帰国後も研究を継続しており、その成果を本学会で報告いたしました(題名:特発性炎症性筋疾患におけるグルココルチコイド不使用寛解後の再発率と寛解・再発の国際筋炎評価・臨床研究グループ(IMACS)基準の検証)。スウェーデンにはThe Swedish Rheumatology Quality Register (SRQ)という自己免疫疾患患者のデータベースがあります。今回はその中の筋炎の大規模データベース(SweMyoNet)を利用し、寛解・再発の国際筋炎評価・臨床研究グループ(IMACS)基準の適合性を検証しました。さらに、修正基準を作成し、グルココルチコイド不使用寛解後の再発率と、その因子について解析したところ、抗Jo-1抗体が再発の危険因子であることを同定しました。
 今回の報告では、IMACSの再燃基準は疾患の再燃を完全に捉えるために修正する必要があるかもしれないことなどを世界的な権威の先生方と議論を組み交わすことができました。その意見をもとに疾患活動性を的確にとらえるモデルをさらに改良することができ、今後再燃に関する因子をより的確に同定することが可能となるものと思われます。この学会に参加できたことは今後の研究の進展におおきな貢献になりました。この集会に出席することで、海外の学者と交流するよい機会となり、世界中の新しい知見を私が知ることで次の研究につながる可能性があると考えます。
 最後になりますが、アメリカリウマチ学会に参加するに当たり、貴財団からの支援によって、無事集会に参加、発表することができました。貴財団に厚く御礼申し上げます。

 

信州大学医学部脳神経内科、リウマチ・膠原病内科
野村 俊

 「Immunopathological features of myopathy associated with small-to-medium-sized vessel vasculitis and differences from autoimmune myositis」の演題でポスター発表を行った。
 全身性血管炎(PSV)では筋痛が初発かつ唯一の臨床症状になり得る。過去に当科では中・小型血管炎の骨格筋障害(vasculitic myopathy: VM)に関する臨床的特徴を解明して報告した。一方、VMの病理学的特徴はこれまで明らかになっていない。本研究ではVMを呈した中・小型血管炎患者の筋組織における免疫病理学的な解析を行い、その特徴を調査した。
 2014年4月〜2022年6月に当科で筋生検を行ったVM患者15名(壊死性血管炎12名、血管周囲炎3名)を自己免疫性筋炎(autoimmune myositis: AIM)患者15名(多発性筋炎11名、免疫介在性壊死性筋症4名)と比較した。免疫組織化学解析は筋のターンオーバーを反映する抗CD56抗体/NCAM、膜侵襲複合体である抗C5b-9抗体/MAC、血管内皮の指標となる抗CD31抗体を用いて行った。10箇所の強拡視野で、CD56/NCAM陽性筋線維の総数、C5b-9/MAC陽性筋線維と血管の総数、CD31陽性血管の総数を計測した。陽性比率を算出し、CD31陽性血管の総数はvascularityスコアと定義した。
 CD56/NCAM陽性筋線維の比率は、VM患者ではAIM患者に比して有意に低値であったが、筋束周囲に限定すると有意差なかった。また、VM患者ではCD56/NCAM陽性筋線維の比率と血清ALD値に正の相関を認めた。C5b-9/MAC陽性筋線維の比率は、VM患者ではAIM患者に比して有意に低値であった。VM患者11名(73%)でC5b-9/MAC陽性筋内膜血管を認めた。筋内膜のvascularityスコアはVM患者で有意に高値であった。
 以上の結果からVMではAIMに比して筋線維の障害が軽度であり、C5b-9/MACの血管壁沈着および筋内膜の血管増生がVMの病理学的な特徴である可能性が考えられた。
 今回、現地のポスター会場にて各国のリウマチ科医と意見交換を行う貴重な機会を得て、新たな課題を見つけることが出来た。今後、この経験を活かし引き続き研究に取り組んでいきたい。

 

京都大学大学院医学研究科内科学講座臨床免疫学教室
京都大学医学部附属病院免疫・膠原病内科
吉田 常恭

 この度は貴財団 国際学会におけるリウマチ性疾患調査・研究発表助成を頂戴する事が出来、大変御礼申し上げます。貴助成のおかげでコロナ禍のためにオンライン参加が中心であった米国リウマチ学会に初めて現地参加する事が出来ました。
 本学会に参加した最も大きな目的が、私の博士課程の研究課題であった基礎研究を発表する事でした。私は関節リウマチ患者において、骨びらんよりも早期に見られる骨炎と骨粗鬆症の関連とメカニズムを、マウスモデルを用いて解明する事をテーマとしていました。その結果、骨炎と骨粗鬆症が関連し、両者の根底にGM-CSFの産生増加がある事、そしてGM-CSFによる単球系細胞の増加と破骨細胞分化促進が病因となっている事を同定しました。学会では演題名「Exploring the link between osteitis and bone microstructure changes in rheumatoid arthritis: role of JAK-STAT signaling pathway」として発表しましたが、国内外の研究者が多くポスター前に来訪し、英語での活発な質疑応答が出来ました。演題は欧米若手医師から成るEMEUNETという団体より、上位10位以内の抄録に送られるEMEUNET Top Award on ACR Awardを受賞する事が出来ました。これを機にさらに研究活動に勤しんで参りたいと思います。
 また、本会場では同時刻に多くのセッションが開催されておりました。最先端の研究に触れるためにも、学会期間中は可能な限り朝7時半から最後のセッションが終わるまで参加し、リウマチ膠原病診療を牽引する欧米の最新の知見に触れる事が出来ました。
 さらに、国際学会ならではの国際交流も出来ました。以前より友人であったタイ人やサウジアラビア人のリウマチ医に再開出来ただけでなく、レセプションに積極的に参加する事で、新たにフィリピン人やブラジル人などのリウマチ医の友人が出来ました。互いの活動を報告し合い、共通する部分では今後の協力を約束しました。
 以上、現地での国際学会参加は私自身にとって大変有意義なものとなりました。今後も研究者として、さらにはリウマチ膠原病内科臨床医として、知識と国際的な人脈を広げるためにも積極的に国際学会に参加したく思います。貴財団からの助成が本学会参加への大きな助けとなった事に改めて御礼申し上げます。