関節リウマチ
T2Tってなに?
ひと昔前まで、関節リウマチは、痛みや腫れなどの自覚症状を抑える対症療法的な治療が一般的でした。
しかし、近年の薬物療法の進歩によって、現在は、関節リウマチ患者さんの将来の関節の損傷を長期にわたって防ぐことが期待できます。
こうした状況の変化を受けて、国際的な組織によって、
関節リウマチに対する治療のアプローチをまとめた「目標達成に向けた治療(T2T:Treat to Target)」が示されました。
T2Tでは「臨床的寛解」を治療目標に設定し、その目標に向かって治療を行っていきます。
これは将来の関節の損傷を防ぐうえで、とても重要なアプローチです。
関節リウマチの治療では、患者さんご自身が確かな知識を身につけ、医師と治療目標を共有し、積極的に治療に参加することが大切です。
ここでは、T2Tの「4つの基本的な考え方」と「10か条」を簡単にご紹介します。
目標達成に向けた治療のための4つの基本的な考え方
① 関節リウマチの治療は、患者とリウマチ医が共に決めるべき
そのために患者さんが知るべきこと
・治療の選択肢
・特定の治療を進める理由(ベネフィット/リスク)
② 最も重要な治療ゴールは、長期にわたって生活の質(QOL)を良い状態に保つこと
これは、次の事によって達成できます。
・痛み、炎症、こわばり、疲労のような症状をコントロールする
・関節や骨に対する損傷を起こさない
・身体機能を正常に戻し、再度、社会活動に参加出来るようにする
③ 治療ゴールを達成するために最も重要な方法は、関節の炎症を止めること
・関節リウマチを進行させる最も大きな原因は、関節の“炎症”です
④ 明確な目標に向けて疾患活動性*をコントロールする治療は、関節リウマチに最も良い結果をもたらします。
それは、疾患活動性をチェックし、目標が達成されない場合に治療を見直すことによって可能となります。
(*疾患活動性:関節リウマチの炎症にって起こる炎症や微候を、病気の勢いの程度であらわしたもの。)
目標達成に向けた治療のための10か条
①関節リウマチ治療目標は、まず臨床的寛解を達成することです
②臨床的寛解とは、炎症によって引き起こされる疾患の症状・徴候が全くないことです
③治療目標は寛解とすべきです。
しかし、特に病歴の長い患者では困難な場合もあり、低疾患活動性が当面の目標となります
④日常診療における治療方針の決定には、関節の診察を含む総合的な疾患活動性のチェック法を用いることが必要です
⑤疾患活動性のチェック法や治療目標の選択には、個々の患者さんの状況
すなわち他の疾患があるか、患者さんに特有の事情があるか、薬の副作用に関する事情があるかなどを考慮します
⑥疾患活動性は定期的にチェックし、記録することが大切です。
中~高疾患活動性の患者さんでは毎月、低疾患活動性または寛解が維持されている患者さんでは6ヵ月ごとに行うことが必要です
⑦通常の診療で治療方針を決定する時には、疾患活動性に加えて、関節の損傷や日常生活動作がどの程度制限を受けているか、他の疾患があるかも考慮します
⑧薬物治療の内容は、治療目標が達成されるまで、少なくとも3ヵ月ごとに見直されます
⑨設定した治療目標に到達した後には、関節リウマチの全経過を通じてその状態を維持し続ける必要があります
⑩リウマチ医は、治療目標の設定と「目標達成に向けた治療(T2T)」を患者さんと共有します
●詳しくは→「よくわかるT2T」
監修:竹内勤先生(埼玉医科大学 学長 / 慶応義塾大学名誉教授)
出典:アッヴィ合同会社