リウマチを知ろう!

リウマチQ&A

手術について

Q.10発症は16歳。現在57歳で、ボルタレン2錠とタクロリムス3mgとケアラム2錠を服用中。39歳より開始のメトトレキサートは、吐き気と激しい腹痛と下痢で中止。昨秋人工膝関節両側置換術を受けましたが、以降30年近く90度で拘縮し可動域0の両肘と挙手が不可な両肩の痛みが激しくなり、今2月の採血でCRPが3.95と急上昇。自己注射を提案されていますが、金銭的にも、又自身での接種も両手指の変形が酷く無理ですし、何より自己注射の針と副作用も怖いので、人工肘にしたいのですが、人工肘対応の病院はどのように探したらよいでしょうか?

現在は両肩の痛みと両肘の可動域制限が症状の主体とのことですが、全身的なリウマチのコントロールはおそらく生物学的製剤によるものを勧められていると思います。
肘関節の手術についてですが、「30年近く90度で拘縮し可動域0」とのことですので、おそらく“骨性強直(関節が完全に骨で固まっている状態;強直肘)”の状態だと思います。手術としては人工肘関節は確かに1つの候補にはなりますが、一般的に人工肘関節の術後成績は膝や股関節と比較して長期成績が芳しくなく、術後早期のゆるみや術後感染の可能性が高くなります。返答者の施設では人工肘関節は基本的には70歳以上に限って行っています。強直肘では関節周囲の靭帯や筋肉が機能しておらず、急に人工関節を入れても術後にそれらの軟部組織が機能をすぐに回復することはなく、機能回復にかなり長期の時間がかかります。近年では肘関節に対しては関節温存手術も適応が広まっていますが、軟部組織が機能していない状態では術後成績は比較的低いものとなります。
肘関節を専門とする施設は関東圏でもかなり限られます。大学でいえば昭和大学・東邦大学等になります。インターネット等を使って、情報を収集されることをお勧めします。
(令和6年8月)

 

Q.9発症30年、57歳の関節リウマチ患者で両肘90度の拘縮、手指趾の変形などあり、両側人工膝関節にしています。最近肩痛で着衣が困難になりました。57歳という年齡では、肩、肘の人工関節は早すぎるのでしょうか?。また逆に私の様な手遅れの者は、もう生物学的製剤の恩恵には預かれないのでしょうか

27歳から関節リウマチに罹患されているとのこと、また関節変形も少なからずお持ちですので、大変な毎日を過ごされていると思います。
さて57歳での肩・肘の人工関節ですが膝や股関節とは異なり、肩・肘の人工関節は現状では耐用年数が短いため、やや早いと言わざるを得ません。おそらく20年持てばよい方だと思いますので、人生100年時代ということを考えますと、最低一度は再置換術が必要になる可能性が高いです。ただ、疼痛や可動域制限で日常生活の支障が大きい場合は、手術が考慮されることもあります。関節の状態にもよりますが、最近では人工関節にはせずに関節温存手術を行う場合もありますので、リウマチの手術を多く行っている施設でご相談されてもよいと思います。
生物学的製剤やJAK阻害薬は効果が非常に高いものの、破壊が進行した関節を基に戻す効果はありません。一方で生物学的製剤やJAK阻害薬は、術後の日常生活動作を維持したり、新たな関節破壊を抑制するなどの恩恵はありますので、病気のコントロールに必要な場合は積極的にその使用を考えて頂いてよいと思います。

(令和6年6月)

Q.8私は10歳から若年性特発性関節炎を患って29年ぐらい経つのですが両膝・両股関節・右肘が拘縮してしまい、生活するうえで介助してもらわないと生活できない状態です。例えば車椅子からのベット・トイレ移乗などです。現在の生活を向上させたいと思っているのですが、拘縮した関節の人工関節・手術は麻痺やその他のリスクがあるので、あまり主治医も勧めません。何か良い方法はありませんか?とても悩んでいます。

破壊された関節の程度にもよるのですが、軟部組織の剥離や術前の拘縮改善の十分なリハビリ・拘縮除去手術後の人工関節などの2期的手術・特殊形状の人工関節を使うことにより手術が出来る場合もあります。

ただし、長年車いす生活であれば、手術が成功した後の歩行に耐えうる筋力が維持されているかも心配です。まだ年齢的にもお若いのでもう一度希望を話されて手術についても、また手術方法や手順についてもリウマチ手術を専門に行っている医師に相談されては如何でしょうか?(平成26年1月)

Q.769歳の主婦です。手指(特に右手第4、第5指とその下の掌)に痛みがあり、通院中です。治癒するのであればと手術を考えていますが、どのような手術になるのでしょうか?また術後に術前と同じような手の状態に戻るでしょうか?

手ならびに手指の滑膜炎と、腱鞘滑膜炎による狭窄性腱鞘炎が原因と考えられます。保存的には安静を保つためのテーピングや消炎鎮痛薬の内服・外用(湿布、塗り薬)副腎皮質ステロイドの腱鞘内注射が有効なことがありますが、効果が乏しい場合や症状が進行している場合には手術療法が行われます。

手術は当該領域の腱鞘性滑膜炎を含めた滑膜切除と狭窄している腱鞘の切開術です。術後経過は一般に良好ですが、病変部位の炎症による腱鞘の肥厚が著しく、かつ広範である場合には稀に切開の範囲が広範となり術後に自力で指が曲げにくくなることもあります(ただし大半は術後1〜3か月以内に自然治癒します)。また手術をしても薬物による治療が不充分であると、また再発してしまいます。ご自身の術後経過については主治医の先生とよくご相談ください。(平成23年1月)

Q.6左ひじの滑膜切除術を受けました。ひじの痛みがひどく薬を増やすか手術をするかしないと痛みはとれないといわれ手術を選びました。右ひじは人工関節術をすでに受けていますので、左ひじは人工関節をせずにと思って手術を決心した次第です。 しかし、術後半年経過しても左ひじの痛みはとれていません。手術をしても痛みがとれない事があるのでしょうか?

滑膜切除術により、かなりの疼痛の程度が軽減されると考えられますが、若干(1〜3割程度)の痛みが残存することもあります。これは、手術の手技的な要因より手術前の関節破壊の程度(かなり進行し残余の軟骨が失われていたなど)に起因している場合と、関節リウマチの治療が不十分である場合が考えられます。主治医の先生とご相談されたらよいと思います。

(平成29年12月更新)

Q.540年以上関節リウマチを患っており、慢性化しております。先日、眼科を受診し、角膜移植の手術を勧められました。 リウマチは免疫異常が原因の1つと考えられており、他人の角膜や臓器を移植したら、拒絶反応が一般の人より出やすいのではないかと危惧しています。関節 リウマチ患者に対する移植手術後の拒絶反応発生率について、因果関係はないのでしょうか?また、資料や論文、統計データはありませんでしょうか?

関節リウマチと角膜移植に関する御質問へ回答させていただきます。角膜移植を勧められたとのことですが、一般に角膜移植は角膜が混濁したとき(角膜実質炎など)、角膜が光を正しく屈折しないとき(円錐角膜など)、角膜が穿孔したとき(外傷や潰瘍の穿孔など)に適応となります。関節リウマチでは関節外症状の一つとして角膜潰瘍があり、穿孔した場合は角膜移植の適応となります。角膜穿孔の場合の拒絶反応の発症率は他の原因の場合と比べ、多くはありません。しかしながら血管病変(血管炎)が基で角膜障害をきたすため、移植角膜に潰瘍が再発することがあり、生着率は低いことが報告されています。いずれにせよ関節リウマチのコントロールが最も重要ですので、眼科だけでなくリウマチ科の先生にも十分にご相談して決められることをお勧めします。

Q.4右手の薬指と小指の腱が切れてしまい、指が内側にしか曲がらなくなり、腱をつなぐ手術を勧められています。また、左手の中指の第二関節が腫れて伸びなくなり、ほかの指に負担がかかるため、その手術もしようかといわれています。 仕事で手をよく使うのですが、手術すれば、今までと同じように指を動かすことがせきるでしょうか? なお、第二関節には、人工関節を勧められています。

関節リウマチで頻繁に切れてしまうことの多い手の指の腱は、指を伸ばす働きのある伸筋腱です(特に小指と薬指)。切れたままでは日常生活を送るうえで大変不便です。やはり手術をなされたほうが良いかと思います。

切れてから間がないのであれば、アキレス腱断裂のように切れた腱の断端どうしを縫合するという手術で済みますが、日数がたってしまうと(切れてからしばらく放置したままにした場合)、整形外科を受診してもその切断された腱の断端どうしの間にうめがたいギャップが生じ端と端を単純に縫合することが出来なくなり、他から採取した代替の腱を移植するか切れていない隣の腱に切れ端を縫い付けるしか方法がなくなります。この場合、手術そのものが大掛かりになるばかりでなく機能的にも端と端を縫合する手術の術後に比べ劣ることが多くなります。
また頻度は少ないながら手の滑膜腱鞘炎や骨の変形のため指の屈筋腱(指を曲げるための腱)が断裂することもあります。 この場合は、手の手術の専門家でないと再建がむずかしいことがあります。人工関節については、近年のもので成績が良いものも出てきています。少なくとも手術しないよりは日常生活の改善が見込まれると主治医の先生が判断されたため、手術を勧められているのでしょうから、今現在よりは指が使いやすくなるものと思われます。

(平成29年12月更新)

Q.3両手首の軟骨が減り、一部は骨まで侵されているため、固まっているようで、動きに制限があります。よく使う手首が痛くつらいです。 それでも軽症のため、補助具や湿布などしか治療はないと言われました。 手術は適当ではないのでしょうか?

手首の手術についてのご質問かと思います。軽症とありますが破壊がどの程度のものなのか、また関節リウマチの活動性がどの程度なのかによって手術をするべきかどうかを判断しなければなりません。

痛みが関節リウマチの炎症で起こっているのか、あるいは炎症の結果、壊れてしまったために痛いのかを区別して、手術するかどうかを考えるべきです。火事で燃えている家に消火もしないでまた家を建てるようなもので、炎症の強い段階ではまずその勢いを止めませんと、せっかく手術してもまた悪くなってしまいます。
しかし、専門医が手術の適応があると判断される例においては、手関節手術後の成績は良好で、患者さんの満足すべき成績が報告されています。
術式としては、滑膜切除術、または、これに手関節形成術を併用した方法がとられます。手術の効果は、主に手関節の痛みの軽減または消失に対して効果がありますが、術後関節の動きはむしろ低下する傾向にあります。それでも、患者さん自身による評価が高いのは、確かな徐痛が得られるためだと思います。
痛みがあるようなら手術を受けられるのがよいと思いますが、動きをよくすることをを主に考えられているようでしたら、期待するほどの効果は得られにくいと思われます。

(平成29年12月更新)

Q.2母は、5年前に右ひざの手術をしましたが、その手術をした部分がむくんでいます。熱をもち、寝る前に氷枕を当ててむくみをとっています。 むくみを防ぐ方法は、ありますか。

5年前の手術とは恐らくひざの人工関節の手術ではないでしょうか。手術した部位が発熱したり、腫脹したりしたときは、まずばい菌(細菌)による感染の可能性を考えなければなりません。なぜならば、人工関節を含めた関節手術の部位が感染を起こして手遅れになれば、人工関節の抜去や、ひどいときには下肢の切断まで考えなければならないからです。自分で判断せずに、症状を主治医に細かく説明し、腫脹や発熱がなぜ起こっているのかの原因を究明することが先決です。もし、主治医がわからないようであれば専門医にセカンドオピニオンを求めるのもひとつの方法です。

人工関節の術後の症状が発熱や腫脹の場合、その他の原因として、人工関節の緩みや、中にある構造物の磨耗が原因のこともあります。また、人工関節術後の感染は、手術直後に感染がなくても、その他の全身の感染巣が血流に乗って人工関節に付着することもあります(虫歯の菌でさえ、人工関節術後、感染を引き起こした例も報告されています)。また非常に弱い菌が、術後しばらくして感染を起こした例も報告されています。主治医との相談、または専門医との相談をお勧めします。

(平成29年12月更新)

Q.1関節リウマチによ人工股関節手術を受けました(70代・男性)が、その後39℃地位の熱が頻繁に出て、座薬で抑えたりしています。血液検査では異常がないようなのですが、何か原因があってのことだと思います。(手術前に熱が出るような事はありませんでした。)ただ、手術前から原因不明の嘔吐がたまにあり、首の軟骨が圧迫している様だとの所見でした。何かアドバイスをお願い致します。

リウマチの熱の原因は様々で、術後となるとさらに難しくなります。情報量が少ないので的確な回答はしかねるかもしれませんが、考えられる原因について述べます。関節リウマチの熱はリウマチそのものの悪化によっても出ますが、多くは38℃以下です。術後の感染では一般にCRPの上昇が参考になりますが、リウマチでは手術前の数値も高いことが多く、判断に迷うところです。ちなみにMMP-3の手術前後の変動はありますか?MMP-3もCRP同様、リウマチの炎症により増加しますが、CRPと異なり滑膜の炎症性変化をより強く受けるため、もしCRPとMMP-3両方が顕著に上がっているようであればリウマチの増悪を、CRPが顕著に上がっているがMMP-3の増加がないかわずかであれば感染症が疑われます(ただしMMP-3は副腎皮質ステロイド服用中で増加するので、副腎皮質ステロイド服用者では塾考が必要です)。ただし手術前の値は参考になるので、現在どのくらい変化しているかは大切です。(今回の場合、血液検査は異常がないとのことですが?)また股関節の手術後の感染は創部が深いことから膿や浸出液が体表に出ることもなくわかりづらいので血液検査の値は重要な指標となります。通常手術そのものの侵襲でも39℃ぐらいの熱は出ますが多くは1週間でおさまります。その他術後ベッド上での安静が長い場合は、尿路感染や誤飲による肺炎・腸炎などの他部位の感染症が合併症として出ることもあります。嘔吐されているようですが下痢はないのでしょうか?術後その他の合併症とし血栓症があり、足が腫れる様な程度のひどい場合は発熱することもあります。あまりにも多くの原因があるため充分な回答は出来ませんが、主治医の先生と良く相談されるのが一番いいのではないでしょうか。