関節リウマチ

島根大学医学部第3内科
島根大学医学部附属病院膠原病内科
村 川 洋 子
 

 妊娠に重要なことは何でしょうか?

1)病勢(病気の活動性)が安定していること。
2)流産や先天性形態異常(いわゆる奇形)を起こしやすい薬を服用していないこと。
3)内臓(腎臓、肺、心臓)の強い異常がないこと。

 

 もっとも重要なことは担当の先生と話し合い、妊娠は計画的に行うことが必要です。妊娠の希望を伝えること、すぐに希望がないとしてもお付き合いしていて妊娠の可能性がある場合は、妊娠可能な薬で治療しているか、避妊が必要かについて相談し理解することも重要でしょう。
妊娠を計画したら、病状が安定しており、寛解(病気の活動性がないこと)や低い活動性で安定した状態を継続していることが重要です。病気の活動性が高いと妊娠しにくくなり、不妊症の率が高くなります。また、関節リウマチの病状は、6〜7割の患者さんで妊娠期間中に次第に良くなる傾向がありますが、妊娠した時に病気の活動性が高いと良くならない場合も多く、妊娠中に患者さん自身の関節症状が進んでしまったり、妊娠を継続するのが難しくなったりすることもありえます。炎症の時に上昇する蛋白が胎盤を通って胎児の発達に影響する可能性もあります。
病気を進行させないため早く良くするために、流産や先天異常を起こしやすい薬を一時的に必要とする場合があります。その場合は、有効性の高い方法で避妊することが必要です。担当の先生や産婦人科の先生と避妊についても相談できると良いですね。
病状が安定して妊娠を計画したら、妊娠に安全な薬で病気をコントロールします。全ての薬を中止してしまって病状が悪くなれば、かえって妊娠しにくい状況になってしまいます。

 

風疹のワクチンは接種した方が良いですか?

免疫抑制性の強い薬物や免疫に関係する生物学的製剤など多くの関節リウマチの治療薬ではインフルエンザワクチンなどの不活化ワクチンはむしろ推奨されますが、風疹などの生ワクチンは病原となることがあり、接種が禁じられています。しかし、妊娠中に風疹に罹患するとウィルスによる先天異常が起こる可能性があります。風疹に対する抗体ができていない方で禁忌となる薬で治療している場合は、同居している家族や接触する機会の多い人で抗体陰性者にワクチン接種をしてもらい感染の機会を減らすようにしましょう。

 

 

関節リウマチの病気自体が胎児に影響することはありませんか?

関節リウマチが安定していたら、影響はしません。但し、関節リウマチの患者さんでは少ないですが、抗SS-A抗体という自己抗体を持っている患者さんがいて、その1〜2%の方で抗体が胎児の心臓に影響することがありますので、妊娠前・妊娠時に確認をします。全身性エリテマトーデスやシェーグレン症候群では抗体陽性の頻度が高くなります。抗SS―A抗体陽性の患者さんは産科で通常より頻回に胎児の経過をみてもらいます。関節リウマチでは更に頻度が少ないですが、抗リン脂質抗体という抗体が流産を起こしやすい場合があります。全身性エリテマトーデスの患者さんはこの抗体陽性の頻度が高いので必要に応じて流産の予防治療をすることがあります。

 

リスクのある薬は妊娠の時期によってどのような影響をおこすのでしょうか?

受精前〜妊娠3週頃までは流産を起こします。妊娠4〜16週では先天的な形態異常(いわゆる奇形)を起こすリスクがあり、特に妊娠8週ぐらいまでが大きな奇形となり、それ以降は影響が少なくなり小さな奇形となります。そのような薬を催奇形性(さいきけいせい)がある薬と言います。妊娠16週以降は胎児の発達に影響する可能性があります。妊娠合併症(妊娠高血圧性腎症、出生時体重、早産)の調査も行われています。
また、妊娠期間ではありませんが、無月経(卵巣機能不全)に影響する薬としてシクロフォスファミド(商品名エンドキサン)が挙げられます。20歳代より30歳代に起こりやすく、年齢が高いこと、治療期間、治療量が影響します。

 

妊娠を計画したら、薬を中止すべきでしょうか?

以前は、薬=胎児に悪影響の考えから、関節リウマチでは、少量のプレドニゾロン(商品名 プレドニン)のみで病状をコントロールし、コントロール不十分であれば、スルファサラジン(商品名 アザルフィジンEN)や屯用の消炎鎮痛薬・アセトアミノフェン(商品名 カロナール)で妊娠〜出産を迎えていました。しかし、Q1で述べましたように、病状が悪くなれば、かえって妊娠に影響する可能性があります。
今日では、薬での治療中に偶然妊娠してしまった方や、妊娠中も薬で治療していなければ病状がコントロールすることができない場合の各々の薬の影響の結果を蓄積し、一定数以上の大勢の患者さんで服用され流産や先天異常の発生率が、薬を服用していない場合と同じであれば、その薬物で治療しながら妊娠してもおそらくは問題がないという判断でガイドライン(治療指針)が作成されるようになりました。先天異常や流産の頻度が高い妊娠前に中止するべき薬、妊娠が判明したらすぐやめるべき薬、妊娠中も必要があれば継続可能な薬に分けられます。中止してしまうとかえって妊娠の合併症が多くなり、中止しない方が良い薬物もあります。表にリウマチ性疾患の内服治療薬に関して記載しました。SLE、RA、JIAやIBD罹患女性患者の出産、妊娠を考えた治療指針http://ra-ibd-sle-pregnancy.org もあわせて参考にして下さい。

 

◎全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、若年性特発性関節炎(JIA)や炎症性腸疾患(IBD)罹患女性患者の妊娠、出産を考えた治療指針「患者様向けQ&A」のQ9妊娠中の薬剤について注意することはありますか?に妊娠中の薬剤についての情報が掲載されています。