北海道・東北地区

平成29年9月3日開催

 

 

「呼吸器疾患合併RA患者の治療戦略 」

 

 独立行政法人国立病院機構旭川医療センター糖尿病・リウマチセンター長

                       平野 史倫 先生


現在、国内のRA治療は、日本リウマチ学会から発行されている関節リウマチ診療ガイドライン2014治療アルゴリズムにより、メトトレキサートおよび生物学的製剤を中心に治療している。実際、国立病院機構を中心に実施している全国RA疫学調査であるNinJaでは、全体の6割を越える患者がメトトレキサートを内服し、3割弱の患者が生物学的製剤を使用している。その結果、DAS28-ESRからみた臨床的寛解あるいは低疾患活動性を達成した患者は、合わせると6割を越えている。しかしながら、間質性肺炎をはじめ各種呼吸器疾患を合併したRAにおいて、メトトレキサートや生物学的製剤は、間質性肺炎の増悪や肺炎をはじめとした感染症のリスク因子として使用困難なことが多く治療に難渋することが多い。

 メトトレキサートにおいては、関節リウマチ治療におけるメトトレキサート(MTX)診療ガイドライン2016年改訂版によると、高度な呼吸器障害を有する患者(低酸素血症の存在、呼吸機能検査で%VC<80%の拘束性障害、胸部画像検査で高度の肺線維症の存在)は投与禁忌であり、薬剤添付文書上でも、間質性肺炎、肺線維症等の肺障害が発現し、致命的な経過をたどることがあるので、原則として呼吸器に精通した医師と連携して使用すること、重大な副作用として、0.1〜5%の頻度で間質性肺炎を発症すると記載されている。また、生物学的製剤については、市販後全例調査の結果から既存肺疾患や間質性肺炎の合併既往は肺炎や感染症のリスク因子として抽出されている。実際に、関節リウマチ診療ガイドライン2014では、すべての従来型抗リウマチ薬(csDMARD)および生物学的製剤(bDMARD)は間質性肺炎を誘導する可能性があり、呼吸器疾患を合併したRA患者では投与に際してはリスクとベネフィットを十分検討する必要があると記載されている。

 そこで、本講演では、実際の呼吸器疾患合併RA治療症例を呈示するとともに、生物学的製剤の市販後全例調査における重要な感染症の発現頻度、あるいはRAにおける生物学的製剤やJAK阻害薬の重症感染症発現頻度のシステマティックレビューを参考に、自院の治療成績も紹介しながら呼吸器疾患合併RAにおける治療戦略について考察したい。

 

 


 

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