北海道・東北地区

平成29年9月3日開催

 

 

 

「RA画像(診断と治療評価への応用) 」

北海道内科リウマチ科病院理事長 谷村 一秀 先生

 関節リウマチ(RA)の診療では2010年に報告されたACR/EULAR新分類基準をもとにその診断がなされ、早期からの治療介入、さらには治療有効性の検証を行うことが重要である。診断においては関節症状や関節炎の証明、また炎症反応や抗CCP抗体価などの免疫、血液学的所見などからその判断がなされるが、現時点では確実に他疾患との鑑別やRA早期診断ができる診断方法は存在しない。このため病歴や身体所見、血液検査、さらには画像検査結果などから総合的に判断する必要がある。画像検査で最も頻用されるものは関節レントゲン検査であるが、最近では早期診断やRA病勢の経過を把握する目的で関節MRI検査や関節エコー検査も重要視されている。関節レントゲン検査では軟骨破壊(関節裂隙狭小化)、骨破壊(骨びらん)、骨変形が観察でき、関節MRI検査ではRA診断に有用な骨髄浮腫、軟部組織(腱や靭帯)、水腫などの観察に有用である。しかし各画像検査においては、その検査手技、所要時間、機器類格差、コストパフォーマンスなどの課題が多いことも事実である。そこで近年、新たな関節画像評価法として関節腫脹や疼痛など関節炎症状を視覚的に捉える事ができ、また微細な骨びらんの描出にも優れた関節エコー検査、特にパワードプラ法(PDUS)を用いた検査が多くの施設で施行され、その有用性が指摘されている。この検査法では炎症をともなった滑膜の血流シグナル(血管新生、異常血流)や腫脹の程度を観察する事で、RAの診断や治療評価に用いることができ、わが国では2011年に「関節エコー撮像法ガイドライン」、2014年には「関節エコー評価ガイドライン」が日本リウマチ学会から発表された。この標準化により誰もが同じような方法で関節や腱、異常血流などの描出、また評価をすることが可能となった。RAの診療、とくに診断分野においては診断基準に各画像検査を組み込むことで診断精度の向上を目指すことが重要である。治療評価においては関節炎症状の改善、また関節破壊の進行抑制をターゲットとした患者単位での治療設定をもとに、DAS28評価法などの臨床的活動性評価と罹患部位の画像的推移を組み合わせた分析、さらに日常生活動作としてのADL評価、HAQ評価などを加えた総合的な臨床判断が重要である。


 

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